まずは、画像の「感情の輪」を思い出してみてください。
喜びや楽しさ、怒りや恐れといった感情が円のまわりに並び、その下のほうに「苦しい」と「嫌悪・キライ」があります。
そして、そのすぐ近くに、ぽつんと
「わからない」
という言葉が置かれています。
この配置が、すごく象徴的です。
私たちはつい
「わからない」
はニュートラルまな状態だと考えがちですが、
この図では
「わからない」
は、喜びや楽しさとは離れた場所にあり
「苦しい」「キライ」
のすぐ隣にいます。
つまり人は、本能的に
「分からない状態」
に長くいることをとても
ストレスだと感じてしまう、
ということを表しています。
学校の授業で、先生の言っていることがさっぱり分からなかった時の、あの居心地の悪さ。
役所の書類の書き方が複雑で、窓口に並びながら心の中でモヤモヤしていた感覚。
あれはまさに、「分からない」から生まれるストレスです。
この
「感情の輪」
は、その延長線上に
「キライ」
があることも教えてくれます。
分からない状態が長く続くと、
人はその対象そのものを
「苦手」「嫌い」
と感じやすくなってしまうのです。
サロンに置き換えるとどうなるでしょうか。
お客様が感じている
「分からない」
は、私たちが想像する以上に
多いかもしれません。
今から何をされるのか?
どのくらい時間がかかるのか?
料金はいくらになるのか?
ダメージはどの程度なのか?
自分の希望はちゃんと伝わっているのか?
こうした
「小さな分からない」
が、来店から退店までのあいだに、
少なくとも十回以上は頭に浮かんでいても不思議ではありません。
さらに、スタッフ側にも
「分からない」
があります。
オーナーがなぜこのメニュー構成にしているのか?
なぜこのキャンペーンを打つのか?
どこを評価してくれているのか?
今月は何を大切にしてほしいのか?
これらが見えないままだと
「自分はちゃんとできているのか」
「何を優先して動けばいいのか」
が分からず、だんだん仕事
そのものが苦しくなってきます。
「分からない」
の近所には
「苦しい」と「キライ」
がある。
感情の輪は、そのことをとても
シンプルに教えてくれています。
サロン運営で大切なのは「分かる化」
私はこの
「分かる化」
を、サロンに関わるすべての人から
「?」
マークを減らしていく取り組みだと考えています。
では、具体的に何を「分かる化」していくのか。
一番分かりやすいのが、
施術の流れや意図の説明です。
たとえばカットやカラーの前に、ただ
「やっていきますね」
とだけ伝えて施術を始めるのと、
「今日はこの順番で進めますね。最初に〇〇をする理由は〜だからです。次にこの工程を挟むのは、△△を守るためなんです。」
と、少しだけ時間をかけて
「なぜ?」
を説明してから始めるのとでは、お客様の安心感が大きく違います。
私自身、できるだけ
・なぜこの施術をするのか
・なぜこの順番なのか
・なぜこの部分にこだわるのか
という
「なぜ?」
を、言葉とイラストでお伝えするように心がけています。
毎月のコラムを書いているのも、まさにこの
「分かる化」
の一部です。
サロンで行っていること、
提案していることの裏側にある意図や理由を、
できるだけ分かりやすくお届けすることで、お客様とオーナー様の「?」を少しずつ減らしていきたいからです。
「分からない」を「分かった」に変えていく
わかるだけわるだけで、防げるトラブルは本当にたくさんあります。
仕上がりのイメージ違い、
料金への誤解、
施術時間の認識違い…。
こうしたすれ違いの多くは、技術の問題だけでなく、
前後の説明を丁寧にすることでかなり減らせるものです。
「わからないはストレスに転じやすい」
という話を、もう少し掘り下げてみます。
感情の輪の中で
「分からない」
が置かれている位置は、先ほどお伝えした通り
「苦しい」「キライ」
のすぐ手前です。
感覚的には、まだギリギリ我慢しているけれど、少しでも負荷が増えたら我慢できなくなりそうな、そんな“境界線”のポジションにいます。
人は、本当に嫌いな人のことを話す時、こんな言葉をよく口にします。
「マジであの人、謎なんだけど」
「本当に意味わからない」
「なんでああいうことするのか理解できない」
この
「謎」
「意味わからない」
「理解できない」
という言葉は、すべて「?」を言語化したものです。
つまり
「嫌い」
とは、感情の表面だけを見れば怒りや不快ですが、その深いところには
「説明されていない」
「分からないまま放置されている」
という状態が積み重なっているとも言えます。
サロンでもまったく同じことが起きます。
お客様がサロンを嫌いになる時、
技術そのものだけが理由とは限りません。
むしろ、
・なぜ待たされたのか、説明がなかった
・なぜ追加料金がかかったのか、よく分からなかった
・なぜ自分の希望と違う提案をされたのか、理由を教えてもらえなかった
といった
「説明の不足」
が、じわじわと不信感を育ててしまうケースが多いと感じます。
スタッフ同士の人間関係でも同様です。
あるスタッフが別のスタッフに対してイライラしている背景には、
・なぜその行動をするのか分からない
・なぜその言い方をするのか説明がない
・なぜその判断になったのか共有されていない
といった
「分からない」
の積み重ねが隠れていることが少なくありません。
だからこそ、接客中にお客様の頭の上に
「?」
マークが浮かんでいそうだと感じたら、
それはチャンスだと捉えていただきたいのです。
カウンセリングの途中で表情が止まった時
施術の説明をしている最中に、少し黙り込んだ時
お会計の説明の後に、眉がピクッと動いた時
こうした小さなサインは、
「今ちょっと分からなくなりました」
というお客様からのメッセージかもしれません。
そのタイミングで一言、
「今の説明で分かりにくいところはないでしょうか?」
「もし『?』が浮かんでいたら、遠慮なく聞いてくださいね」
とお声がけするだけで、「分からない」は「聞いてもいい」に変わります。
そして、質問をしていただければ、こちらはそれに答えることができます。
このやり取りがあるかどうかで、そのお客様のサロン体験は大きく変わっていきます。
私がコラムに時間をかけている理由も、まさにここにあります。
ある格言に、
「人間関係が悪化するのは相性の問題ではなく、互いに説明を怠るからである」
という言葉があります。
サロンワークを見ていると、本当にその通りだと感じます。
相性が悪いように見えるスタッフ同士でも、お互いの考えや背景をじっくり話してみると、「そういう意図があったのか」と分かり合えることが少なくありません。
お客様との関係も同じで、
「なぜそのメニューを提案したのか」
「なぜその施術が必要なのか」
を丁寧に説明することで、信頼関係が一気に深まることがよくあります。
説明することは、ただの情報提供ではありません。
相手を守り、関係性を守る行為だと私は思っています。
だからこそ、私はサロンの「分かる化」にこだわっています。
このコラムも、その一環です。
文章やイラストを使って
「なぜ?」
を説明することで、
お客様とオーナー様、
スタッフの皆さんの頭の中にある「?」を、一つずつ「!」に変えていくお手伝いができればうれしいです。
まとめ
感情の輪の中で
「分からない」
は、
「苦しい」と「キライ」のすぐ隣
に置かれています。
人は「分からない」状態が続くと、それだけでストレスを感じ、その対象を嫌いになりやすいということを、この図は教えてくれています。
サロンの現場には、お客様側にもスタッフ側にも、たくさんの「分からない」が存在します。
・施術内容
・時間
・料金
・ダメージ
・メニューの意図
・オーナーの考え方…。
これらが分からないまま積み重なると、「なんとなく苦しい」「なんとなく嫌い」という感情につながってしまいます。
だからこそ、サロンには「分かる化」が必要です。
施術の前後で「なぜこの順番なのか」「なぜこの方法なのか」を丁寧に伝えること。
スタッフ同士で、なぜそのルールがあるのか、なぜその目標なのかを共有すること。
そして、お客様やスタッフの頭の上に「?」が浮かんだ瞬間を見逃さず、きちんと説明すること。
説明することは、相手を守り、関係を守ることにつながります。
もしサロンの中で
「ここが分からないな」
と感じることがありましたら、ぜひ遠慮なく質問してください。
私も、できる限り分かりやすくお伝えしていきます。
これからも一緒に、サロンの「分かる化」を進めていければ幸いです。